生涯忘れられない案件になった イメージ

生涯忘れられない案件になった

銀座の美容室案件は、結局、プランを10回ほど修正したでしょうか。素材を探しにジャカルタまで足を運んだぐらいですから、関係者のこだわりは強く、着工までに半年を要しました。

しかし、いざ始めると、そこからは早い。2011年1月に着工すると、工事は急ピッチで進み、2ヶ月で竣工しました。

この美容室は、大げさに言えば、私、大川祐介にとって生涯忘れられない案件となりました。というのも、これは、私がしっかり現場に入った最後の案件であり、これ以降、現場で管理に携わることはなくなったからです。

もちろん、そのときは「これが最後になる」とは思っていません。ただ、関係者の気迫が強烈だったので、いま思えばラストにふさわしく、私もずいぶんと熱が入りました。何度も何度も修正をかけながら、工事を進めていきました。

それだけに、完成したときの感動はひとしおです。

デザイナーとは、「本当に良い物件を作ることができたね。やりきったね」と手に手をとって喜びあいました。あまりに過酷なスケジュールに「もう間に合わないかもしれない」と現場で泣いてしまった自由が丘のエステサロンとは違って、涙を流すことはありませんでしたが、達成感で思いがけず泣きそうになったことは、ここに正直に告白しましょう。

「最上級」という言葉がふさわしい空間誕生 イメージ

「最上級」という言葉がふさわしい空間誕生

後から聞いた話ですが、オーナーは当初、この美容室の予算を実際に請け負った金額の半分以下、と考えていたそうです。それが、デザイナーと私の二人三脚によるプレゼンに心が動き、提案したプランにゴーサインを出したんですね。

確かに、デザイナーのプランはずば抜けて洗練されていました。尖っていました。エッジが効いていて、主張がありました。かといって、決して冗長でも余分でも過剰でもない。必要な機能、必要な装飾にとどめながら、際立った美しさを追求していた。これは、彼女にしかできないデザインだったと思います。

プロジェクトに加わった音響デザイナーさんのノウハウ、こだわり、知見も見事に活かされていました。「最上級」という言葉がふさわしい空間には、30ヶ所以上にスピーカーが設置されているため、床からも天井からも、どこに座っても、音が美しく滑らかに聞こえてきます。

カウンセリング用専用のスペース、ジャカルタから仕入れたタイルを用いたフルフラットのシャンプー台。これらすべてが見事に融合して、一流ホテルのラウンジのような空間を創りだしていました。機会があれば多くの人にぜひ見てほしい。このゴージャスな空間に身をおいて、上質な空気を堪能してほしい。そう思います。

当然といえば当然ですが、この美容室は業界から大いに注目されました。誰もが「いいね」「よくやったね」と評価してくれました。海外からも視察に訪れる業界関係者がたくさんいらっしゃいました。私、大川祐介も、社員にこの美容室を見せたくて、見学会を実施したほどです。

未曾有の災害を乗り越えて人気店に成長 イメージ

未曾有の災害を乗り越えて人気店に成長

ところで、私は何度も「美容室」と言いましたが、この銀座のお店は実際には美容室であり、ネイルサロンであり、メイクアップのスペースもあるトータルビューティサロンです。

「美の殿堂」という言葉がふさわしい美容室の工事が無事に終わり、引き渡しをしたのは、忘れもしません、2011年3月9日でした。

そう、東日本大震災の2日前です。引き渡し後に大地震が発生したわけですが、幸い、倒れたものはゼロ。店には何ら問題はありませんでした。

しかし、オープンは3月16日でしたから、当然、客足はさっぱりです。とんでもなく凄い美容室を作った!そう思ったものの、自然災害の前になす術はありません。この銀座の美容室は、言ってみれば最悪の時期にスタートしたわけです。

幸い、いまは固定ファンを獲得し、順調に推移しています。未曾有の大災害を乗り越えて、お客様にしっかりと評価され、人気店に成長されました。関わった私、大川祐介としても、こんなにうれしいことはありません。

私、大川祐介はこの案件に関われたことを心から誇りに思います。

採点をするなら92点 イメージ

採点をするなら92点

さて、この案件に点数をつけるとすると、100点満点。そう言いたいところですが、私、大川祐介の採点は92点です。

なぜかといえば、設計も施工もパーフェクトでしたが、家具の制作にちょっとした問題がありました。細かいことですが、ある家具の角の3次元の作りが今ひとつだったのです。

納得のいかない家具をそのまま店舗に設置したのか?

とんでもない。家具の制作の現場に出向き、すべてを作り直してもらいました。タイトなスケジュールのなか、家具の制作会社に交渉し、説得し、なんとか納期までに間に合わせてもらったのです。

このバタバタがちょっとしたマイナス点。さらにいえば、進行段階でほかにもバタバタと慌てる局面がありました。要するに、スムーズな進行ではなかったんですね。これもマイナスです。

終わりよければすべてよし、ではない イメージ

終わりよければすべてよし、ではない

終わりよければすべて良し。そういう考えもあるでしょう。

確かに、出来上がった美容室は表面的には何も問題ありません。欠点を見つけるのが難しいほどの出来栄えです。

それでも、私としてはパーフェクトとは言いがたい。やはり、常に100点を目指したい。これは私のこだわりです。

いま振り返っても、あの現場は興奮するほど楽しかった。刺激に満ちていました。正直にいえば、今でも社長業よりも現場に入る方がずっとずっと面白い。現場のほうが性に合うと、ふと思うことがあります。

機会があればまた現場に入りたい。現場に入って、一つの空間を完成させるプロセスに直に携わり、完成を見届けたい。これもまた、ユニオンテックの社長である私、大川祐介の本音なのです。