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特命ゆえの甘えが生じた

お客様の信頼を危うく失いそうになったのはどうしてなのか。
 簡単に言えば、「特命」での受注だったことで、私に甘えが生じていたからです。「ぜひともユニオンテックさんにお願いしたい」と言われたことで、私の心の中に、「そこまで信頼し期待されているんだから」という甘えに似た気持ちが膨らみ、本来であればもっと懇切丁寧に説明し、きめ細かにフォローすべきところをないがしろにしていたような気がします。
 レーザーによる切り抜きの作業費について、原価の見積りをお客様にお見せしたときもそうでした。
 私は、この金額が明らかにお客様の予算をオーバーすることはわかっていました。実際にはこれぐらいかかってしまうので、やはり他の方法を考えましょう。そう順を追ってお伝えするつもりで、数字をお伝えしました。

きめ細やかなフォローが欠かせない イメージ

きめ細やかなフォローが欠かせない

しかし、お客様はそう受け取りませんでした。
 いきなり高い数字を見せられ、「こんなに費用がかかるなんて」と驚き、それが次第に「ユニオンテックから提示される数字は本当に妥当なのだろうか」「相場なのだろうか」という疑問につながり、ついには「ユニオンテックを指名したのは間違いだったのかもしれない」という不信感につながっていったのではないかと思います。
 店舗を作るにはかなりの投資が必要です。金額に関してはどのお客様も非常にセンシティブです。
 それが当たり前なのですから、私はもっと慎重かつ念入りに数字の根拠をご説明すべきでした。コンペを経ていないお客様には比較対象がないため相場観がわからないことが多い。その実態を踏まえて、「ほかの方法であればこれぐらいの費用です」という代替案を一緒に提案するなどして、理解を図るべきでした。
 それをしなかったのは、私の中に一種の「甘え」があったからにほかなりません。業界の相場や他社の事情に触れる機会がないお客様には、こちらからの丁寧なアプローチが必須なのです。

失敗は成功のもと イメージ

失敗は成功のもと

幸い、この案件では最終的に完成した店舗をたいそう気に入っていただき、お客様には「こんな良い空間が誕生するとは」と高く評価していただきましたが、これ以降、私はお客様の信頼を裏切ることのないよう、より丁寧で、よりきめの細かなフォローをさらに心がけるようになりました。
 これは、特命でもコンペでも、リピートのお客様であろうと、あるいはご紹介のお客様であろうと同じです。特命のお客様だからという甘えは許されないこと、お客様に信頼していただくには何が必要かをこの一件を通して学ぶことができたのです。
 失敗は成功の母。最近、千葉県で美容室を経営されている若いご夫婦から直接お問い合わせをいただき、丁寧な説明を心がけたことで、再び特命で設計施工のご依頼をいただきました。本当にありがたいことです。

働くスタッフを後押しする空間デザインを追求する イメージ

働くスタッフを後押しする空間デザインを追求する

特命でお仕事のお話をいただくことが増えているのは、美容関連の空間デザインには何が必要なのかを私が常に考え、それを言葉でお客様にお伝えするようにしているからかもしれません。
 先述のお客様のケースもそうでしたが、私は営業先でいきなり空間デザインの話はしません。私がお客様に最初にお尋ねするのは、デザインというよりも経営に関する考えです。そのお客様がどのようなビジョンを掲げ、どんなお店を経営していきたいのか、店長やスタッフの教育に関してどのようなポリシーを持ち、実践されているのか。何よりもまずそれらをお聞きします。
 どんなに空間デザインが素晴らしくても、それだけで集客できるわけではありません。本当に素晴らしい空間デザインとは、そこで働くスタッフを後押しするもの。動線が機能的で、スタッフが作業をしやすく、そこで働くことが誇りに感じられ、店のコンセプトを明確に表した働きやすい空間があってはじめて、お客様がついてくる。集客力が高まるのです。
 それを実現するためにも、オーナーのスタッフへの想いをヒアリングすることは必須。重要なのは人材を要とする経営方針であって、空間デザインありきのお店では成功は見込めない。それが私の考え方です。

業者でもない、友人でもない、パートナーとしての提案 イメージ

業者でもない、友人でもない、パートナーとしての提案

打ち合わせでお客様にお会いすると、私はまずスタッフや店長さんたちのことを教えてくださいとお願いします。どのようなキャラクターなのか?容姿は?年齢は?経験値は?とお客様にお尋ねし、可能であれば直接、スタッフの方にもお話をお聞きします。
 そうして初めて、お客様がどのようなお店を目指そうとしているのか、その構想の中で空間デザインがどのような役割を果たすべきかのイメージがつかめてくるからです。
 先ほどお話したお客様の場合も、お店に最初にうかがったときに、スタッフの働きやすさとモチベーションのあり方について、熱心にヒアリングをして自分なりの意見を申し上げたら、その考えに共鳴いただき、特命でのお仕事につながりました。2回目の打ち合わせに出かけたら、先方がスタッフの教育に関する詳細な計画書をまとめていらっしゃいました。お店に来店されるお客様のご要望にお応えし、追加メニューも自主的に考え、客単価を上げていく努力を自らできるスタッフを育てていくためのプランです。当初は、お客様を呼べる空間デザインを考えていたのが、スタッフがプライドを持って働ける空間デザインへと発想が変わってこられたんですね。素晴らしいことだと思いました。
 お店がオープンしてからも、この空間デザインで本当に良かったのか?もっとスタッフやお客様にとって働きやすい、心地いいサロンになるんじゃないかと、アドバイスを求められることはよくありますね。我々はお店が出来た後でも本当にそれで良かったのか、もっとこうしてもいいんじゃないか?というバージョンアップ提案もしております。オープンしてからでないとわからないこともありますしね。ただ、これはつまり、私は単なる業者ではなく、かといって友人という立場でもなく、お客様が私を対等のパートナーとみなして、意見を求めているということ。こんなにうれしいことはありません。
 これからも、お客様に決して甘えることなく、常に緊張感を持ちながら、パートナーとしてお客様に成功をもたらす空間デザインづくりを実践していきます。