【グループインタビュー】長く愛される飲食店はどう生まれるのか。 感動・収益・持続可能性を同時に設計するデザイナーの哲学。 | 社内レポート | 採用情報 | ユニオンテック株式会社

慶應義塾大学法学部を経て桑沢デザイン研究所でデザインを修め、空間デザインの名門・スーパーポテトで国内外の話題店を手がけた河合優吉氏。独立後は一躍注目を集めたが、MBAの取得、M&Aコンサル、蓄電池スタートアップへの参画……まるで回り道に見えたその歩みが、彼を全く新しいデザイナーへと生まれ変わらせた。

昨年秋、ユニオンテックグループとの新体制で飲食店専門の空間デザイン会社「designspirits(デザインスピリッツ)」を再始動。再始動から間もなく1年を迎えるいま、河合氏に現在の思想と情熱を語ってもらった。

designspirits代表・河合優吉氏。再始動から約1年、その思想と情熱を語った。


ビジネス畑への「回り道」が、デザイナーを変えた


ーーdesignspiritsを再始動した背景を教えてください。

一言で言うと、「結局、たどり着いてしまった」という感じです(笑)。元々は、デザインを離れて色々やってみたかったのです。M&AコンサルやWEBマーケティングもやったし、蓄電池のスタートアップにも行ったし、MBAも取りました。

でも気づいたら、どこへ行ってもクリエイティブが関わるものーー例えばパワポなどの販促物は自分自身で作って、ウェブサイトも僕が作って、展示会ブースのデザインも僕がやっていたんです。しかも、頼まれてもいないのにどんどんクオリティを上げていく癖が出てしまっていた(笑)。

ユニオンテックに来てからも、周りから「河合さん、これほどデザインへの情熱があるのに、なぜ設計をやらないのですか」と。いつもデザインへの思いが透けて見えていたんでしょうね。それで、まあ、気づいたら自分の意志でデザインに戻ってきていました(笑)。

「どこに行ってもデザインに携わってしまった。たどり着いた、という感じです」

 

── MBAや事業会社での経験は、今の設計思想にどう活かされていますか?

決定的に変わったのは、「言語化」能力が爆発的に上がったことですね。以前は「かっこいいでしょ」で通していたところを、今は「なぜこの天井にこの照明でなければならないか」を全部説明できる。なぜなら、MBAでは多角的に、お金だけではなくて人の気持ちとか、その時のマーケットの動きなどの移りゆく外部環境に対して適応する方法など、本当にたくさんのユースケースを学ぶんです。

だから今は、デザインだけが突出するのではなくて、オペレーション、収益、持続可能性……に、すべてを押しなべて平均点以上にすることを基本としようという考え方です。(その上で、尖らせるべきところは見極めます。)

徐々にビジネスが分かるようになると、そこに資金を投じるクライアントの目線に深く寄り添えるようになりました。3,000万、5,000万、時には1億を借金して作ろうとしている人たちの立場に立つと、「借金が全部返せますように」と本気で思って設計するようになるんです。以前は大企業のクライアントからいただく案件が多かったから、今ではだいぶ感覚が変わったと思います。


 「長く愛される店」3つの条件


 ── 「長く愛される」ために、空間設計で特に重視していることは?

三つあります。

一つ目は「食をおいしくする空間であること」。バズるような派手なデザインの空間って「味に自信がないから、お店のインパクトでカバーしているんでしょ」と思われたら終わりです。飲食店は物販とは違い、インパクト(ワオ!)だけは勝負がつかない。食事をしながら、思わずここいいよね、と言葉がもれるような空間の調律をいつも意識しています。

▲美味しく感じさせるファサード

 

二つ目は「経年変化で味が出る素材を使うこと」。メラミンや安価なボードは傷がつくと「汚い」と見られる。でも古材や石は最初から自然と傷があり、それは味になっています。傷ついた瞬間に価値が下がる素材は、長く続くお店には向かない。

 

▲経年変化で味が出る素材

 

三つ目が「オペレーション設計」です。食材の搬入から、シェフの動き、料理の配膳ルート、下げ膳、洗浄、食器戻し……この一連を一筆書きで美しく設計できるか。これをやらないと余分な人件費がかかって儲からなくなる。5人で考えていたオペレーションを3人で回せる設計を提案する。それが収益に直結するんです。

他の設計事務所さんも気にしていると思いますが、「オペレーションは5人でやります」と言われたら「わかりました」と5人前提で設計する方は多いのではないかと思います。僕はお節介なのかもしれないけど(笑)、お店が閉店してしまうのを何度も見てきたから、運営経費やサービススタッフの疲労度合などまで考えずにはいられないんです。

── お店が閉店してしまうのを目にしてきた、というのは?

内装設計の仕事は、建築と違って何十年もお店が残るわけじゃないんですよ。さまざまな事情でお店が数年で閉まって、写真だけしか残らないということが内装の世界では多々あります。それが悲しくて。

だから設計したお店を今でも見に行くんです。外からこっそり様子を見る。どこか改装されていると何がそうさせたのかを考える。素材の劣化なのか、オペレーションの変化なのか、客層のズレなのか…。
その答えを次の設計に織り込んでいきます。

 

一方で、内装も変わらず、何年経っても賑わっているお店を見た時は、自分のデザインは間違っていなかったと嬉しくなる。だから一店舗一店舗、見た目だけじゃなくて本当に儲かって長続きするお店を作りたい。文字通り、30年は長く愛される気合いで設計しているんです。

 


>>後編へ続く(7月21日リリース予定)

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